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【BAR Lowo=Tar=Voga】開店日記-03-わたしは無力
◇12月某日、わたくし近藤和見は押さえ込んでいたとある心情を抑えることができなくなっていた。

◇2013年、馬齢を重ねとうとう今年で38歳になる。舞台活動は多くの人を巻き込む。そしてそのほとんどの関係者に資本主義的利益はない。自分もまたそうである。もとより華もなく芸はつたなく、努力や根性と思い込みを尖がらして半歩半歩進めたこの10数年間の歩み。しかしまだ38歳といえどもう38歳。「おれは新人類かもしれない」と思ったほど寝ずに活動できた20歳台のわたしはすでに過去の他人となり、アルバイトでは大学生に「あの歳でバイトって終わってるよねぇ」とあえて聴こえる陰口を叩かれ、なにくそ、ここからが勝負なんだと自分に言い聞かせるも、精神的には断崖のタンポポのようにこのままひっそりと我枯れてゆくなり・・・、などと厭世の感を強めていた。

◇12月某日、わたくし近藤和見は愚図な観念で抑えてきた熱心を隠すことができなくなっていた。舞台活動はまわりが「やめときよ、舞台なんて喰えないし、どうせ続かないって」と反対しても頭をひねり胸を叩き左右のひざを繰り返し折り伸ばしすることで前に進んできた。日常生活においてはどうか。惰性でアルバイトや仕事をして暮らせる年齢ではなくなった。明々白々の事実。わかりきった結末に進むほどわたしはナルシストではないしそもそもヒロイックな感情は嫌いだ。手前でなにかするより他はない。自分でお店を作り営業し糧を得ねば、遅かれ早かれ演劇活動も続けることができなくなる。あるいは天涯孤独に「わたしはすべての幸福を捨てて舞台をしているのだぁ」などと夢想家を気取るしかなくなる。嫌だ、と思った。そうして熱い日本酒をちびりひっかけて眼をきつく瞑り精神を落ち着けたわたしは、家族、友人、知人に我が意を伝え、その決意はけして翻らないことを周知するに至ったのである。

◇その後、物心双方へさまざまの協力をいただき、開店へ向け進めることができた。とりわけUrBANGUILDオーナーの次郎さん、家主の森川さんには深くお世話になっている。

◇で、内装が始まり「ぼくも雑用でもなんでもします!」と鮫島(VOGA創始メンバーのひとり)からゆずりうけた濃紺のつなぎを着込み、道具も運び「さぁ、なんでもしまっせ!なにしましょう」と尋ねると「いや、なんにもすることないし、これどう?とか訊きたいときに決めてくれたらええわ」と次郎さん。つまりなにもしないでくれ、ということであった。わたしは無力であった。

◇で、今日メールが届いた。「入り口に積んでる廃材に、燃やしたら黒煙が出る接着剤が着いてるからそれ剥がしてくれ」との由。初めて仕事をもらった。明日頑張ってべりべり剥がそうと思う。

店のそばに流れる高瀬川にかかる【くるまやばし】

壁が張り変わった
| 誰かのための日記 | 00:11 | comments(1) | trackbacks(0) |
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| - | 2013/04/01 11:43 PM |









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