2008.08.02 Saturday
『漆黒の風に記名せよ(改変版)』よりシーン【太陽の風が吹く】
◆ふと自分の書いた文章を思い出した。読み返そうと思った。それは2006年に執り行った公演『漆黒の風に記名せよ(改変版)』のラストシーンの言葉の群れだ。…女性3名がひとりの男性へ向けて数珠繋ぎに語る言葉の群れ。ひとひとりの精神の大きさは宇宙より大きいと思うぼくのイメージでは、以下の言葉はあたりまえにいつも思っている言葉である。ほかの人物はその言葉を聴きながらキラキラするほどでもない星々の映像のなかで揺れている…。
◆宇宙に吹いているという「太陽風」。精神を無限の宇宙と比するぼくが、太陽風に興味を魅かれるのは摂理である。それは「熱くて速くて多い」のだと、しぶといぼくの理想が願う。どうやらぼくのなかの太陽風が強まってきたのかもしれない。この文章を書いたあと、音楽を作った。その音楽と合わせて読み合わせていたとき、不覚にも涙がでた。ぼくが自作のもので感情が揺れるのは「なにかに書かされている」という自覚があるときだ。この文章もそんな不可思議な感覚になっていた。おそらくいろんな感情と出来事の記憶がぼくにこの文章を書かせたのだろう。悔しかったことや楽しかったこと、恋人との約束や別れ。家族への信頼や裏切り。もちろん演劇の仲間達への気持ちも。もう戻らない過去と信じきれない未来のはざまにある『いま』という時間を再生するためにこれを奉ぐ。
【太陽の風が吹く】
それは随分昔のことだ
君と僕は同じ時間に大声を上げて泣いた
空気が皮膚に触れ少し痛いような
光がまぶたを初めて通り眼窩が痛むような
随分昔そんな始まりがあった
無垢な君はいつしか親になる
そして新しく生まれる子供たちも
すでに僕は同じ時間に生まれている
だから自然に君は僕を思う
だから自然に君と僕は出会う
君と僕は自然に初めから許されている
君と僕の間にある閉ざされた闇は
突き立った光の線で引き裂かれて見える
君と僕は初めから許されているのに
その線が余りにも鋭く見えるために
君はすべてが許されているように思えない
僕はもう200億年ほど前に名前を書いた
君も書かないか?漆黒の風に!
漆黒の風に?
そう、漆黒の風に…
見よ!
太陽から風が吹いている
強い風だ
見よ!
太陽から風が吹いている
熱い風だ
その浮力で僕は「ふわり」と浮かび上がる
君は空を見上げ君は僕を見つける
僕は「あんぐり」口を開けた君の顔が可笑しくて
ほんのすこしだけ君をからかうことにする
君は後になって思う
息を潜めて考える
持続する風のことを
「あんぐり」口を開け佇む君自身のことを
太陽の風は熱くて速くて多くて
なぜなら風は太陽を引き連れて
誰も知らない君を守るために吹いているから
だから太陽の風は熱くて速くて多い!
見よ!
太陽から風が吹いている
強い風だ
見よ!
太陽から風が吹いている
熱い風だ
僕は在り続け僕は動き続けている
やはり君も止まることができなくて
それは君の愉楽の扉を開ける原因になる
見よ 太陽から風が吹いている
見よ 太陽から風が吹いている
君は登り降り渡り進む
しかし
君は急に足を止め崩れる
君は登り降り渡り進む
しかし
君は急に呼吸を止め崩れる
君は登り降り渡り進む
しかし
君は急に眼を閉じ崩れる
君は登り降り渡り進む
しかし
君は急に感情を吐き出し崩れる
君は…
君の中で僕は動き僕の中で君は動き
君の外は光満ちて点と線と面を見せる
僕の外は誰も知らず僕の中は闇に満ちて
君の外は光が満ちて君に星と月を見せる
時に君は空を見上げ遠き思い闇に沈む
時に僕は君を見つけ君を思い震え揺れる
僕はもうみつかった?
君に?
見つからないよ!
ごらん誰もが僕を探している
見つからないさ!
見つかるなんてこれまで一度もなかったんだから…
君の死はひとつの暗闇だ
生もまたひとつの暗闇だろうし
僕もそうだ
君と同じ闇を持っている
僕の死もひとつの暗闇で
生もまたひとつの暗闇
寂しくなんかないさ
ただ暗闇を光で照らされると
僕の死が明らかになってしまうだろう?
ねぇ君はそれを見て「美しい」なんて言わないだろうね?
ねぇどうか「美しい」なんて言わないでくれよ
存在したものはすべて霧散するんだ
霧散するから許可される
僕はそう思う
そうしている
けれどそれが当たり前だと
君は言い切れるかな?
そうだ!
君は風を追いかけたことがあるだろう
僕はそれを見ていた
見ていたから知っている
ねぇあの時の風はどこへ向かっていた?
風はどこに進んでいた?
東?
西?
南?
北?
ちなみに風はどんな風だった?
遊んでいた?
笑っていた?
怒っていた?
それとも
…泣いていた?
きっと君と僕はそこを目指していた
風の彼方へ行こうとしていた
太陽が風を引き連れやってくるように
僕は君を引き連れ飛んでゆきたい!
そう思った
君を引連れ光の速さを追いかけたい
そう思ったんだ!
君と僕は近づくほど遠くなるみたいだ
入口もあるし出口もあるのに
どこから入ったのかどこから出るのか!
わからない?
だって君はなにも知らないじゃないか!
君と僕は近づくほど遠くなるみたいだ
ゼロから始まる訳じゃないなら
ヒャクで終わるはずがないのに
わからない?
だって君も思い違いをしているじゃないか!
君と僕は近づくほど遠くなるみたいだ
近づくほど遠くなる
だって君と僕は
ほらっ!
近づくほど遠くなってるじゃないか!
…君と僕はまるで新しい銀河みたいだ
どうか君よ
この苦しみを言葉で
言葉で答えないでおくれ
君は僕に憧れ
「僕」を考えた
「僕」を知った君は
驚き眼を丸くする
君は初めから僕だった
君はそのことに驚く
僕は初めから知っていたから
君の驚きをからかいたくなる
けれど君は僕の全部を知らない
けれど僕は君の全部を知ってる
君は最期まで知ることがないから
僕は苦しみに収斂される
どうか君よ
この苦しみを言葉で答えないでおくれ
君と僕の間には
漆黒の風が吹いている
それは太陽が引き連れて来た風だ
誰かが見つけた風だ
誰かが夢を引き連れて
探して見つけた現実の風だ
君と僕は始まりの瞬間に
人間くさい一切の馴れ合いから
忘却へ向かうつきなみな興奮からも
解放されていたんだ
それは太陽が引き連れて来た風だ
誰かが見つけた風だ
誰かが夢を引き連れて
探して見つけた現実の風だ
君と僕の間には
200億年の一瞬を
漆黒の風が吹き続けている
まるで「永遠」のような
漆黒の風が吹き続けている
…まるで「永遠」のような
…漆黒の風が吹き続けている
まるで「永遠」のような
◆宇宙に吹いているという「太陽風」。精神を無限の宇宙と比するぼくが、太陽風に興味を魅かれるのは摂理である。それは「熱くて速くて多い」のだと、しぶといぼくの理想が願う。どうやらぼくのなかの太陽風が強まってきたのかもしれない。この文章を書いたあと、音楽を作った。その音楽と合わせて読み合わせていたとき、不覚にも涙がでた。ぼくが自作のもので感情が揺れるのは「なにかに書かされている」という自覚があるときだ。この文章もそんな不可思議な感覚になっていた。おそらくいろんな感情と出来事の記憶がぼくにこの文章を書かせたのだろう。悔しかったことや楽しかったこと、恋人との約束や別れ。家族への信頼や裏切り。もちろん演劇の仲間達への気持ちも。もう戻らない過去と信じきれない未来のはざまにある『いま』という時間を再生するためにこれを奉ぐ。
【太陽の風が吹く】
それは随分昔のことだ
君と僕は同じ時間に大声を上げて泣いた
空気が皮膚に触れ少し痛いような
光がまぶたを初めて通り眼窩が痛むような
随分昔そんな始まりがあった
無垢な君はいつしか親になる
そして新しく生まれる子供たちも
すでに僕は同じ時間に生まれている
だから自然に君は僕を思う
だから自然に君と僕は出会う
君と僕は自然に初めから許されている
君と僕の間にある閉ざされた闇は
突き立った光の線で引き裂かれて見える
君と僕は初めから許されているのに
その線が余りにも鋭く見えるために
君はすべてが許されているように思えない
僕はもう200億年ほど前に名前を書いた
君も書かないか?漆黒の風に!
漆黒の風に?
そう、漆黒の風に…
見よ!
太陽から風が吹いている
強い風だ
見よ!
太陽から風が吹いている
熱い風だ
その浮力で僕は「ふわり」と浮かび上がる
君は空を見上げ君は僕を見つける
僕は「あんぐり」口を開けた君の顔が可笑しくて
ほんのすこしだけ君をからかうことにする
君は後になって思う
息を潜めて考える
持続する風のことを
「あんぐり」口を開け佇む君自身のことを
太陽の風は熱くて速くて多くて
なぜなら風は太陽を引き連れて
誰も知らない君を守るために吹いているから
だから太陽の風は熱くて速くて多い!
見よ!
太陽から風が吹いている
強い風だ
見よ!
太陽から風が吹いている
熱い風だ
僕は在り続け僕は動き続けている
やはり君も止まることができなくて
それは君の愉楽の扉を開ける原因になる
見よ 太陽から風が吹いている
見よ 太陽から風が吹いている
君は登り降り渡り進む
しかし
君は急に足を止め崩れる
君は登り降り渡り進む
しかし
君は急に呼吸を止め崩れる
君は登り降り渡り進む
しかし
君は急に眼を閉じ崩れる
君は登り降り渡り進む
しかし
君は急に感情を吐き出し崩れる
君は…
君の中で僕は動き僕の中で君は動き
君の外は光満ちて点と線と面を見せる
僕の外は誰も知らず僕の中は闇に満ちて
君の外は光が満ちて君に星と月を見せる
時に君は空を見上げ遠き思い闇に沈む
時に僕は君を見つけ君を思い震え揺れる
僕はもうみつかった?
君に?
見つからないよ!
ごらん誰もが僕を探している
見つからないさ!
見つかるなんてこれまで一度もなかったんだから…
君の死はひとつの暗闇だ
生もまたひとつの暗闇だろうし
僕もそうだ
君と同じ闇を持っている
僕の死もひとつの暗闇で
生もまたひとつの暗闇
寂しくなんかないさ
ただ暗闇を光で照らされると
僕の死が明らかになってしまうだろう?
ねぇ君はそれを見て「美しい」なんて言わないだろうね?
ねぇどうか「美しい」なんて言わないでくれよ
存在したものはすべて霧散するんだ
霧散するから許可される
僕はそう思う
そうしている
けれどそれが当たり前だと
君は言い切れるかな?
そうだ!
君は風を追いかけたことがあるだろう
僕はそれを見ていた
見ていたから知っている
ねぇあの時の風はどこへ向かっていた?
風はどこに進んでいた?
東?
西?
南?
北?
ちなみに風はどんな風だった?
遊んでいた?
笑っていた?
怒っていた?
それとも
…泣いていた?
きっと君と僕はそこを目指していた
風の彼方へ行こうとしていた
太陽が風を引き連れやってくるように
僕は君を引き連れ飛んでゆきたい!
そう思った
君を引連れ光の速さを追いかけたい
そう思ったんだ!
君と僕は近づくほど遠くなるみたいだ
入口もあるし出口もあるのに
どこから入ったのかどこから出るのか!
わからない?
だって君はなにも知らないじゃないか!
君と僕は近づくほど遠くなるみたいだ
ゼロから始まる訳じゃないなら
ヒャクで終わるはずがないのに
わからない?
だって君も思い違いをしているじゃないか!
君と僕は近づくほど遠くなるみたいだ
近づくほど遠くなる
だって君と僕は
ほらっ!
近づくほど遠くなってるじゃないか!
…君と僕はまるで新しい銀河みたいだ
どうか君よ
この苦しみを言葉で
言葉で答えないでおくれ
君は僕に憧れ
「僕」を考えた
「僕」を知った君は
驚き眼を丸くする
君は初めから僕だった
君はそのことに驚く
僕は初めから知っていたから
君の驚きをからかいたくなる
けれど君は僕の全部を知らない
けれど僕は君の全部を知ってる
君は最期まで知ることがないから
僕は苦しみに収斂される
どうか君よ
この苦しみを言葉で答えないでおくれ
君と僕の間には
漆黒の風が吹いている
それは太陽が引き連れて来た風だ
誰かが見つけた風だ
誰かが夢を引き連れて
探して見つけた現実の風だ
君と僕は始まりの瞬間に
人間くさい一切の馴れ合いから
忘却へ向かうつきなみな興奮からも
解放されていたんだ
それは太陽が引き連れて来た風だ
誰かが見つけた風だ
誰かが夢を引き連れて
探して見つけた現実の風だ
君と僕の間には
200億年の一瞬を
漆黒の風が吹き続けている
まるで「永遠」のような
漆黒の風が吹き続けている
…まるで「永遠」のような
…漆黒の風が吹き続けている
まるで「永遠」のような